HAYNES® 282® 合金とは?高温性能と加工性を両立したスーパーアロイ

HAYNES® 282® 合金 (UNS N07208) は、航空宇宙や産業用ガスタービンエンジンなど、極めて高温の環境下で使用される重要な構造部品向けに開発された、ガンマプライム強化型の鍛造超合金(スーパーアロイ)です。優れた高温強度、クリープ強度、熱安定性に加え、高い溶接性と加工性を兼ね備えたユニークな合金として注目されています。

HAYNES® 282® 合金の主な特徴

卓越した高温強度・クリープ強度

HAYNES® 282® 合金は、特に649~927℃ (1200~1700 ℉) の高温域で抜群のクリープ強度を発揮します。この温度域において、従来型の263合金を超える優れた強度を示し、特に:

  • 低温域(649℃付近)では Waspaloy 合金と同等のラプチャー強度を発揮
  • 高温域(816~927℃)では Waspaloy 合金を凌駕する強度性能
  • 1500~1700 ℉(816~927℃)では、加工性が難しいことで知られる R-41 合金と同等のクリープ強度を保持

優れた加工性と溶接性

高いクリープ強度を持ちながらも、加工性に非常に優れているのが HAYNES® 282® 合金の大きな特徴です。その秘密は比較的低いガンマプライム強化相の体積比率にあり、ひずみ時効割れに対する高い耐性を持っています。

  • 溶体化処理後も高い延性を維持し、容易な加工を実現
  • 溶接性も抜群で、GTAW(TIG)や GMAW(MIG)溶接に最適
  • 機械加工性はWaspaloyと同等以上の性能

HAYNES® 282® 合金の用途

HAYNES® 282® 合金は、その優れた特性から多様な分野で活用されています。

  • ガスタービン部品:燃焼器、タービン、排気セクション、ノズルなどの高温重要部品
  • 発電プラント部品:A-USC(先進超々臨界圧発電)、超臨界CO2発電、集光型太陽光発電のボイラや蒸気タービン
  • 自動車用ターボチャージャー:シール、耐熱ばねなど高温耐久性が求められるパーツ
  • ASMEボイラーコード関連用途

幅広い製品形態

HAYNES® 282® 合金は多様な製品形態で提供可能です。

  • 薄板・厚板
  • 棒材・線材
  • パイプ(継ぎ目無し・溶接タイプ)
  • 鍛造材
  • 粉末(付加製造向け)

標準的な熱処理方法

HAYNES® 282® 合金は通常、加工性が良い溶体化処理された状態で供給されます。加工後、強度特性を最大化するために標準的な2ステップ時効処理を推奨しています。

  • 第1段階:1010℃ (1850 ℉)で2時間保持後、空冷
  • 第2段階:788℃ (1450 ℉)で8時間保持後、空冷

熱間加工は955~1177℃ (1750~2150 ℉) の範囲で容易に行え、冷間加工も良好な延性によりスムーズに進みます。